スタートアップにとっての「良いアイデア」とは

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株式会社ブイクックは、インパクトスタートアップとして、急成長をもって社会を前に進める会社です。

このブログでは、ブイクックが新たな事業・機能のアイデアを考える上で、大切にしている(大切にすべき)ことを4つに分けてまとめておきます。

1. インサイトから始めているか?

スタートアップに関する書籍/記事、投資家と会話することがあれば、第一に出てくるのは「どんな課題か?」という問いである。

スタートアップとして成功する(というより失敗しない)ためには、想像上の顧客や理論ではなく、実在するインサイトからはじめ、課題の質にフォーカスすることが重要だ。

インサイトからはじめる

スタートアップがPMFを達成できずに失敗するのは、課題に向き合っていないからだ。実際にプロダ⁨⁩クトをつくる前の段階で、顧客とコミュニケーションを取り、検証に十分な時間をかけていないことは大問題となる。

特に、スタートアップは資金・人材・知名度を持ち合わせていないため、課題を軽視するのは自殺行為と言える。

建物を出よ(Get out of the building)

スティーブ・ブランク氏

データと睨めっこしたり、頭の中で考えたりするのに終始せず、顧客と対話しマーケットの解像度を高めることが重要になる。

机上の空論で「誰にも求められず、使われない」悲しいサービスをつくることに時間をかけず、まずは建物を出て深いインサイトを得ることに集中する。

ヘルスチェック

「インサイトから始められているか?」のヘルスチェックとして、以下の3つの問いに明確に回答できるようになっていると良いと考える。

  1. ターゲット/ペルソナは、実際に誰か?→〇〇さん
  2. 取り組む課題は誰が持っていたか?→〇〇さんが、△△の行動をしていた
  3. ターゲットは課題に対してどう代替していたか?またその代替案の何が不満か?→〇〇さんが△△で代替していたが、□□が不満を持っている

自分の課題から始める

インサイトからはじめるという点において、課題が自分事であることは良いことだ。

自分ごとの課題であれば、深い共感と熱意を持って、本気で磨き込むことができる。反対に、思い入れのない第三者の課題の場合、それゆえに表面的な検証となる可能性がより高くなる。

自分事の課題でなくとも、身近な人の課題で、その痛みを解像度高く理解していれば良いことだと言えると思う。

アイデアに固執しない

最初の”良さそう”なアイデアに固執してはいけない。社会に変化を生み出すためのスタートアップのアイデア・事業は、作っては壊しての繰り返しとなる。

これを前提に、「顧客にとって本当に痛みのある課題か?」「このアイデアの妥当な代替策は既に存在していないか?」と、自問することが求められる。

2. 隠れた真実か?

お金も人も少ないスタートアップが「みんなが賛成すること」を選択しても勝ち目がない。みんなが賛成する事実であれば、既に多くの企業が取り組み、いわゆるレッドオーシャンになっているからだ。

まだ誰も気が付いていない「隠れた真実」をいち早く発見し、小さいが重要な市場へのサービス提供から始める。

賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?

『ZERO to ONE』ピーター・ティール

「隠れた真実」を信じる

「隠れた真実」とは「重要だが知られていない事実」もしくは「実現可能だが実現不可能と思われている事実」である。

「隠れた真実」は、アイデア段階では反対意見が多く、軽蔑されることもある。しかし、だからこそビックプレイヤーはこの事実や市場を無視し、参入しない(もしくは参入の意思決定が遅れる)。

この逆風に日和ってしまい、ただ困難なだけなのに不可能だと思い込んでしまえば、事業が始まることはない。つまり、「隠れた真実」を信じることがスタートアップにとっての鍵となる。

頭の良さはもちろんだけれど、隠れた真実の存在を信じなければ、これを解き明かすことはできなかった。もし難しいだけのことを不可能だと思っていたら、解決への努力を始めようとも思わないだろう。隠れた真実を信じることこそが、鍵となったのだ。

『ZERO to ONE』ピーター・ティール

みんなが”良さそう”と思えるアイデアを避ける

スタートアップは、100人が「いいね!」と言うアイデアではなく、1%が喉から手が出るほど求めるプロダクトをつくる。

インターネットが普及し、世の中の動きが速くなったことで、最初に取り組んだ企業/事業を見て「自分たちもやろう!」と後追いしても遅すぎる場合がある。だからこそ、その市場で勝ち抜くためには、誰よりも先にPMFを達成することが重要となった。

つまり、多くの人が”良さそう”と思える課題に対しては、既に妥当な代替案がある場合が多い。このような課題をスタートアップが狙うのは、リソース勝負・価格勝負になるため浪費するだけに終わってしまう。

局地戦で戦う

「大きな市場なら、わずかなシェアでも売上が立つ」という罠にかからないように気をつける必要がある。

顕在化している大きな市場に足を踏み入れれば、数%のシェアを取るためにも多くのリソースが必要になる。既に存在する競合サービスの数々と、競争することになるからだ。

スタートアップは、注目されていない限定的な市場で圧倒的なシェアを取ることから始める。その後、横展開して売上を高めるという順番でなければ、消耗してしまうだけだ。

競争とは「負け犬」のすることだ

ピーターティール氏

市場の1%を獲得するのは思ったほど容易ではない

ガイ・カワサキ氏

起業家が1000億ドル市場の1%を狙うという場合は常に赤信号だと思ったほうがいい。実際には、大きな市場は参入余地がないか、誰にでも参入できるため目標のシェアに達することがほとんど不可能かのどちらかだ。

『ZERO to ONE』ピーター・ティール

限定的な市場の例

  • Airbnb:全米都市でスタートせず、大規模イベントの周辺地域をターゲットにした
  • amazon:カタログ化しやすい書籍から始め、CV/DVD/ゲームなど周辺領域に展開
  • Facebook:大学1校ずつ、ユーザー登録率75%を超えるまで次の学校に展開しない

3. 大きな波に乗っているか?

課題にフォーカスし、隠れた真実を解き明かしたとしても、求める人が数十人しかいないとすると急成長することはできない。

最終的には何百万人、何千万人から求められるプロダクトをつくるために、大きな波に乗っているか?という問いを大切にしている。

大きな波

「PMFした先に、転がり落ちる坂道がある地形か?」にYesと回答できる市場を選択していなければ、一生懸命にプロダクトを改善し続けても、急成長は見込めない。

「大きな波」とはつまり、成長市場であり、メガトレンドであり、時流であると言える。

成功したどの企業も、成長市場の波に乗っている。2回目の大成功を生むために重要なことは、その波が消える前に新たな大波をつくることだ。

ー Jeff Kagen(#8 The GLEe Model

大きな波(時流)にマッチしてスケールした事例

Airbnb・リーマンショックの波(売り抜けない投資目的住宅)
・Facebookの波(Facebook本人認証がインフラ化)
Uber・モバイルの波(米国スマホ普及率7割以上)
・シェアリングエコノミーの波(最小限の資産で身軽に生きる価値観)
Netflix・DVDの波
・ECの波

10年後の当たり前から考える

大きな波であるかどうかは、競合企業やデータを見るのはもちろんだが、「10年後の当たり前から考える」ことで大きなヒントを得られる。

例えば、ガラケー時代にスマートフォンが当たり前になる未来を想像したiPhoneやAndroid、飲酒運転が0になる時代から逆算して生まれたノンアルコールなどがある。

今ある既存商品(過去のもの)を起点に考えてしまうと、「そこそこ良いもの」しか生み出せなくなってしまう。

そうではなく、10年後の人々の生活はこんな当たり前になっているだろう、こんな当たり前にしなければならない、という未来(想像・願い)を起点とすれば、思考の制限が外れる。それが「未来に近づける発明」を生み出すことができる

競合分析から機会を発見することを、商品づくりの起点としてはなりません。(中略)なにより重要なのは「競合商品は過去のもの」であるということ。これから描くのは未来です。

『商品はつくるな 市場をつくれ』p45

未来をつくるなら、みるべきものは競合他社や社内ではありません。新しい時代のお客様の生活スタイルの変化、価値観の変化です。

『商品はつくるな 市場をつくれ』p34

”習慣”の延長線上にプロダクトを置く

どんな大発明も、習慣を無視しては普及しない。

例えば、ガラケーからiPhoneに変わってもキーボードのUIは変わらず、ChatGPTもLINEなどの馴染みあるメッセージアプリのUIと同様だった。

普及した大発明の1歩目は、人々の”習慣”を観察して得た、深いインサイトの上にあると考えている。

つまり、スタートアップとして社会に大きな変化を与えるプロダクトをつくるために、”習慣”を見逃す訳にはいかない

そして、顧客がありたい姿/実現したい未来を描き、今の習慣の延長線上に1%だけ方向を変えるようなプロダクトを”置く”ことを意識する。

4. 10倍良い(=違うもの)をつくる

まずは限定的な市場で競争状態から抜け出すためには、重要な価値の部分で二番手よりも少なくとも10倍良いものをつくることが求められる

また、社会的インパクトを最大級に与えるには、既存サービスと同じことをしていても仕方がない。あるべき社会の状態を思い描き、そこに足りていないものを発明することで、理想の未来に近づけることができる。

イノベーションの新しさとは、時間がどれだけ経過していないかというものとは関係ありません。既存のモノゴトとどれだけ異なっているかがポイントです。

『イノベーション』清水洋(p4)

小さな違いを追いかけず、大胆にかける

10倍良いものを作る方法は大きく2つ。全く新しい何かを発明するか、既存サービスを10 倍改善することで競争から抜け出すかのどちらかだ。

競合サービスの延長線上で小さな違いを生むのではなく、顧客にとって価値のある部分で10倍良いものをつくるために大胆にかける。

10倍良いものは、既存サービスとは比較されず、全く違うものと認識され「〇〇するなら、△△の一択だ」と選ばれるようになる。

具体的な例は以下の通り。

PayPal小切手送付より10倍速い
Amazon既存書店より10倍種類が多い
iPad既存タブレットより10倍良いデザイン

プロプライエタリ・テクノロジーは、ビジネスの一番根本的な優位性だ。それがあれば、自社の商品やサービスを模倣されることはない。

『ZERO to ONE』ピーター・ティール

競合サービスがあるのは悪いことではない

良いアイデアを思いついた時に、競合サービスがあるからといって「遅かった」と諦める必要はない。競合他社のスタートアップが理由で失敗することは稀であり、成功/失敗は「課題の質」に依存する

競合のスタートアップに殺されることは、ごく稀なことだ
It’s exceptionally rare for startups to be killed by competitors

ポールグレアム『How to Get Startup Ideas』

競合他社がいる良いアイデアは、競合他社がいない悪いアイデアよりも優れている
better a good idea with competitors than a bad one without.

ポールグレアム『How to Get Startup Ideas』

混雑した市場は良い兆候

もしも得たアイデアの市場が混雑している場合、2つの理由から良い兆候だと言える。

1つはそのアイデアの需要があると検証されていること、そして既存の解決策に「ダントツで良いもの」がまだ存在していないことを示しているからだ。

実際に、Googleは最初の検索エンジンではないし、メルカリは最初のフリマアプリではない。

スタートアップが明らかに競合企業のいない市場に参入することはほとんどないため、競合企業が知らない/無視している「隠れた真実」を解き明かし、「10倍良いもの」をつくることに集中することが重要だ。

他の全て人が見落としている仮説がある限り、「混雑した市場」に入ることを心配する必要はない。実際、それは有望な出発点だ。 Google はそのタイプのアイデアだった。

ポールグレアム『How to Get Startup Ideas』

おまけ:避けるべきアイデア

最後に『起業の科学』にある「スタートアップが避けるべき7つのアイデア」を参考にまとめておく。

1. 誰が見ても、最初からいいアイデアに見えるもの

  • 一見”良さそう”なアイデアは、既に誰かが取り組み、大抵は失敗している。
  • もしその事業が世にない場合、PMFの勝ち筋がないか、十分な代替案が存在していると考えた方がいい。

2. ニッチすぎる

  • クレージーなアイデアで闇雲にニッチを見つけて攻めればいいわけではない。
  • 現状はニッチでも、将来的に成長する市場(=大きな波)であるべき。

3. 自分が欲しいものではなく、作れるものを作る

  • 創業者や創業チームができること、持っている技術で作れるものを作っただけのプロダクトでは、誰にも使われずに終わる。
  • 課題にフォーカスした上で困難なことあっても、できることを組み合わせる、もしくはできるようになることが求められる。(そんな創業チームをつくる)

4. 根拠のない想像上の課題

  • 「こんなものがあればニーズがあろう”だろう”」という思いつきで始めた場合、一部の人から指示されたとしても失敗する可能性が高い。
  • クラウドファンディングなどでたまたまお金が集まったとしても、PMFしたわけではないと肝に銘じなければならない。

5. 分析から生まれたアイデア

  • 市場を俯瞰し、空いている部分を狙うというロジカルなアイデアであっても、スケールするストーリーや創業者の思いが欠けている場合、プロダクトの磨き込みができない。
  • 市場環境が少しでも変わったら、適切なピボットもできず空中分解するケースが多い。

6. 激しい競争に切り込むアイデア

  • 既に成熟市場に差し掛かった市場に参入すると、既存企業と熾烈な競争となる。
  • 大手企業との価格勝負の持久戦に勝つことは難しいため、スタートアップは「競争を避けること」が戦略の第一義であると考えるべきだろう。

7. 一言では表せないアイデア

  • 「誰の、何(課題)をどう解決するか」を一言で表せないアイデアは磨き込みが足りない。
  • 世の中にインパクトを与えるプロダクトをつくるには確信をつく必要がある。

参考書籍/記事・関連記事

ここまで書いた「大切にしている4つの観点」は、自分の経験からというよりは、先人から知恵を借りたものです。

そのため、未だ成功はしていない僕が胸を張って「正解の方法です」と言えるものではなく、あくまで現時点で大切にしていることだと理解いただけると幸いです。

最後に、このような考えのベースになっている、参考にした書籍/記事を紹介しておきます。

参考書籍/記事

学びや発見を、このような形で残してくださっている先人の方々に、心から感謝です。

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他にも、関連する詳細を書いた記事を紹介させていただきます。

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✏️ 書いている人

工藤 柊 / Kudo Shu

1999年2月28日大阪生まれ。高校3年生で環境問題・動物倫理からヴィーガン生活を開始。神戸大学国際人間科学部環境共生学科に入学後、学食へヴィーガンメニュー導入、ヴィーガンカフェThallo店長など活動。学生起業しNPO法人設立後、事業拡大のため2020年4月に株式会社ブイクックを創業。夢は世界平和。趣味は恋バナと漫画・アニメ。

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