イノベーションについての学び
背景
もう数年ほど前にピッチした際に、ある記者に「スタートアップは新しい技術で世の中を変えるものだと認識していますが、御社はどんなイノベーションを起こすんですか?」という質問をもらったことがあります。
僕はその問いに明確な答えを持てておらず、「イノベーションとは何か?」について調べたことがあります。
2023/11/22に個人的にまとめたドキュメントを再編集して、ブログでも残しておきます。
イノベーションとは
『イノベーション』を読んでのまとめ。
イノベーションとは、経済的な価値を生み出す新しいモノゴトです。これは2つのポイントに分けて考えることができます。経済的な価値を生むという点と、新しいという点です。
技術的な新しさがあったとしても、それが経済的な価値を生み出すとは限らないのです。いくら新しくても、経済的な価値を生み出していなければ、イノベーションとは呼べません。
新しさとは
イノベーションの新しさとは、時間がどれだけ経過していないかというものとは関係ありません。既存のモノゴトとどれだけ異なっているかがポイントです。
💡シュンペーターの5つのイノベーション
シュンペーターは、イノベーションを新結合と考えていました。これまでとは違った新しい組み合わせです。そして、この新結合が経済的な価値を生み出すとイノベーションと呼ばれます。
- 新しい製品やサービス
消費者に知られていない新製品やサービス、あるいはこれまでにない品質の製品・サービスを提供すること。(例)内視鏡、インスタントラーメン、ウォークマン
- 新しい工程
既存の製品やサービスを新しい生産方法でつくることでコストを下げる。(例)トヨタ生産方式、マクドナルド
- 新しい市場
地理的な新市場に限らず、新しい用途やカテゴリーを開拓する。(例)スターバックス → サードプレイス市場
- 新しい原材料・半製品
新素材を活用してコストや性能を改善する。(例)炭素繊維を用いたボーイング787ドリームライナー
- 新しい産業組織
組織構造やビジネスの仕組みを刷新する。(例)ゼネラル・モーターズ → 事業部制組織
経済価値とは
イノベーションは、生産関数を向上させます。
生産関数 = アウトプット / インプット
🍎リンゴの例
リンゴの生産関数 = リンゴ20トン / (リンゴの種 + 土地 + 農薬 + 労働力 + ハチ)
イノベーション≠技術革新・科学的発見
- 技術革新・科学的発見も、生産関数を変えなければイノベーションではない。
- 逆に、技術革新や科学的発見がなくても、新しいモノゴトで生産関数を向上させればイノベーションになる。
イノベーションのパターン
イノベーションには、プロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーションの2つのパターンがある。
- プロダクト・イノベーション:新しい製品やサービスに関するイノベーション
- プロセス・イノベーション:製品やサービスの新しい作り方に関するイノベーション
初期段階ではプロダクト・イノベーションが多く、徐々にプロセス・イノベーションが増えていきます。
初期段階
- 初期段階では、プロダクト・イノベーションの割合が高い。
- まだ製品がどんなものか分からず、消費者も生産者も手探り状態。
- さまざまな製品を試す必要があり、製造工程に大きく投資するのは合理的でない。
ドミナント・デザイン
産業で支配的になった製品デザイン(=ドミナント・デザイン)が登場すると、プロダクト・イノベーションからプロセス・イノベーションへと競争の焦点が移る。
- 製品/サービスへの理解が共有され、類似製品が増える。
- 新規性が小さくなり、「いかに安価に生産するか」に競争が移るためプロセス・イノベーションが増える。
生産性のジレンマ
- コスト・ダウン競争では規模の経済が働き、大規模生産になる。
- 大型設備投資は頻繁な設備変更を阻み、結果としてプロセス・イノベーションを減らす。
- 効率性と製品の新規性の間にトレードオフが生じる。
イノベーションの普及
エバレット・ロジャーズの普及理論(1962)によると、イノベーションはS字カーブで普及し、初期は緩やか、途中から加速し、最後に減速します。重要なのは、新しい製品/サービスは直線的に普及しないこと。
イノベーター理論
イノベーター(2.5%)
- 本当に使えるのか分からなくても採用する。
- 濃密で小さなコミュニティ。「新しさ」で競う。
- マーケティングの訴求点は「最先端」。
アーリーアダプター(13.5%)
- 良いかを見極めた上で早めに採用。
- オピニオンリーダー/インフルエンサー。オープンに広める。
アーリーマジョリティ(34%)
- 最先端を好まずリスクを避けたい。
- アーリーアダプターの意見を重視するが、周囲に遅れたくはない。
レイトマジョリティ(34%)
- 「他の人も使っている」ことが安心材料。
ラガード(16%)
- 保守的で価格重視。新しいもの好きと思われたくない。
普及のための5つの条件
- 既存のものと比べて比較優位があること
- 使う人の行動に適合的であること
- 使い方がわかりやすいこと
- 試しに使えること
- 使っていることが他人から見えること
『人類とイノベーション』
『人類とイノベーション』より、事例を載せておく。
事例:ジャガイモのイノベーション
- ジャガイモの普及はまだ約500年。
- 当初はハンセン病の原因になるという誤説でフランス議会が栽培を禁止。
- 不作対策として、低コストでリターンが大きい作物として普及。
- より簡単にお腹いっぱいになれることが普及を後押しした。
事例:「0(インド数字)」のイノベーション
- 1202年ごろ、一人のイタリアの商人が近代的な数字と算術、とりわけゼロの使用をヨーロッパに紹介。
- 中世前期のキリスト教世界で使われた体系では掛け算がほぼ不可能で、代数も理解しづらく、会計も発達しなかった。
- インド数字は、商人たちがより儲かるために普及した。
“イノベーションとは「アイデアの生殖(セックス)」である”
あらゆるテクノロジーは他のテクノロジーの組み合わせであり、あらゆるアイデアは他のアイデアの組み合わせである。
新しいテクノロジーは既存のテクノロジーの組み合わせで生まれ、既存のテクノロジーはさらなるテクノロジーを生み出す。組み換えは自然淘汰が生物学的イノベーションを起こすときに活用する変異の主原因であり、組み換えをもたらすのは大概「生殖」だ。
(雄の遺伝子を半分、雌の遺伝子を半分提供された)その胚は、精子と卵細胞をつくる段になると遺伝子の乗り換えで父親のゲノムの一部を母親のそれと交換する。遺伝子のトランプをシャッフルし、次世代に伝える新しい組み合わせをつくる。生殖によって進化は累積的になり、生き物は良いアイデアを共有できる。
これが人間によるイノベーションと似ていることは、明白すぎるほど明白だ。
人口密度が高いほどイノベーションが起きやすい
イノベーションは現在のシリコンバレー、ルネサンス期のイタリア都市国家、古代ギリシャや中国の都市国家、肥沃な川流域など人口密度が高く交易が盛んな場所で生まれやすい。
高い人口密度は人々が専門化できる環境をつくり、テクノロジー変化を加速する。太平洋の島でも島が大きく、他島と交易がある場合に複雑な漁の技術が発達する。
小規模で孤立した集団ではテクノロジーが単純で、イノベーションのペースは遅い。
人々に理解されるには「15年」かかる
人は新しいテクノロジーの影響を短期的に過大評価し、長期的に過小評価する傾向がある。最初の10年は過剰期待、20年後には過小評価、15年後にちょうどよく理解される。
発明が実用的で信頼できる手ごろな価格のイノベーションになるまで、その約束が果たされない時間が長いため、こうしたパターンになる。