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価格の決め方:原価vs相場vs価値

最近、起業家の友人と「価格をどう決めるか?」という話をすることが多いです。

そこで、2026年3月時点での価格の決め方についての考えをまとめます。

原価vs相場vs価値

タイトルにもある通り、価格を考える際に一般的に参考にされるのは「原価」や「相場」だと思います。 友人と話す中でも「原価が〇〇円だから」や「この商品の相場は〇〇円前後だから」という話がよく出ます。

もちろん「原価」「相場」は価格決定において重要な要素です。 ただ、僕たちはここに「価値」を加えて考えるようにしています。

きっかけは、2024年に読んだ『「価値」こそがすべて!』でした。

「価値」こそがすべて!

なぜ価格が大切か

事業活動において、「利益」は最重要指標の一つです。利益があれば事業展開を加速でき、赤字が続けば倒産します。

「利益=売上-コスト」であり、「売上=価格×販売数」です。つまり、利益において「価格」は重要な指標

価格について

もしも年間10,000人が購入する製品の場合、たった100円違うだけでも100万円の差になります

利益の観点から見ると、「原価ベースの価格設定」も「相場ベースの価格設定」も、落とし穴になり得ます。

原価の罠

よくあるのは、「原価は3,000円だから価格は10,000円にしよう」という決め方です。

しかし、これはお客様の立場からの思考が不足しています。

お客様は、原価率が高いから買う、原価率が低いから買わない、とは考えません。

実際、今このブログをカフェで書いていますが、ホットティーの原価を考えて360円を払ったわけではないです。原価が1円でも100円でも、僕は「カフェで作業するため」に支払っています。

価格≧原価

原価について

ただし、原価は価格の下限を定めるうえで役立ちます。

ホットティー360円をつくるのに400円かかっていては、売れば売るほど赤字になります。これは原材料に限らず、製造・販売に必要なコストを上回る価格をつける必要がある、ということです。

一方で、原価を下げられたとしても、原価率を一定にして価格まで下げる必要はありません

例えばスターバックスは、店舗数の拡大で規模の経済が働き、コーヒー豆を安く仕入れられるようになっても、価格を下げ続けるわけではありません。

彼らは原価から価格を決めるのではなく、お客様が「何円払う価値があると感じるか?」から価格を決めています。

相場の罠

もう一つよくあるのが、「類似商品は2,000円だから、それより少し安く1,800円にしよう(あるいは2,200円にしよう)」という決め方です。

しかし、相場に合わせる価格設定は、シェアの大きい大企業と正面から戦うことになります

規模の経済による原価優位に、小さな会社は太刀打ちできません。

相場について

そのため、個人・小規模企業が新製品を出すときは、「相場より安く売れる方法」を発明するか、「相場より高く売れる魅力」を生み出すか、どちらかが良いと考えています。

そうでないと、他と同じような製品(しかも大企業製品はどこでも買える)を、めちゃくちゃ努力して売るしかなくなってしまいます。

例えばMacBookは、他PCの相場とかけ離れた高価格帯にもかかわらず、僕も含めて多くのAppleユーザーが喜んでお金を支払っています。Appleは、相場より高くても買いたくなる魅力(価値)を生み出しています。

一方、コストコは相場より安く販売する方法として会員制の事業モデルを発明し、「安いこと」自体を魅力にしています。

Appleもコストコも、相場ではなく「価値」にフォーカスしています。

価値から価格を決める

ここから本題です。

原価や相場ではなく、「価値(Willingness to pay)」を基準に価格を決める方法です。

価値とは何か

お客様が「支払いたい」「支払っても良い」と思う金額(Willingness to pay)を「価値」と呼んでいます。

要は、お客様が「何円払う価値がある」と感じるかということです。

コーヒーについて

コーヒーの香りが広がる個人店のこだわりの一杯には1,000円払っても納得する一方、コンビニコーヒーは300円でも高く感じることがあります。

こう考えると、原価が高くても価値が低ければ売れないし、相場より安くても価値が低ければ売れないことが分かります。

一方で、価値が高ければ原価が安くても、相場より高くても売れます。

また、「原価」「相場」が「価値(WtP)」に影響を与えることもあります。例えば、ラーメンに和牛が乗っていると2,000円以上でも納得感が出るかもしれませんし、お客様の頭の中にある「ラーメン一杯1,000円前後」という相場(アンカー)にも影響されます。

『「価値」こそがすべて!』では「創造された価値=WtP-WtS(売却意思額)」と定義されていますが、ここでは伝わりやすさを優先し、「WtP≒価値」として扱います。

価値≧価格

価格を価値以上に上げることは、基本的にできないと考えています。

お客様が「このラーメンなら1,000円払える」と思っているのに1,500円で販売すれば、来店してもらえないか、メニューを見て帰ってしまいます。あるいは食後の不満が口コミとして広がるかもしれません。

よって、価格の上限は「価値(Willingness to pay)」です。

満足度=価値-価格

満足度について

満足度を「価値-価格」で捉えるのも『「価値」こそがすべて!』からの学びです。

例えば「1,000円くらいかな」と考えているラーメンを500円で食べられたら満足し、1,000円なら「まあこんなもんか」という感想になります。

確かに、めちゃくちゃ美味しく、量も多く、接客も良い店で「もっと料金を上げた方がいいのでは」と感じるのは、まさにこの構造です。

価格ではなく、価値を高める

価値について

最も学びになったのは、価格を上げたいときに「どうすれば価格を上げられるか?」ではなく、「どうすれば価値を上げられるか?」を考えることでした。

価格に着目するのではなく、「価値」、つまりお客様が支払いたい金額(Willingness to pay)をどう高められるかにフォーカスすべきです。

例えば靴メーカーで、通常のランニングシューズの単価が5,000円だとします。

「これを5,000円以上で売るにはどうするか?」ではなく、「どうすればお客様は10,000円払っても良いと思ってくださるか?」と考えるとアイデアが浮かんできます。

そうすると、「速く走れるデザイン」「消臭効果のある生地」「他にないビッグサイズ」など、お客様の困りごとを解決する方法が思いつきます。

あるいは、課題解決ではなく、有名デザイナーとのコラボや、好きなモデル・選手が履いていることが価値になるかもしれないです

シューズについて

通常以上の価値があれば、相場の2倍の10,000円でも買ってくれる人は現れます。

つまり、「誰が」「何に」「どれだけ価値を感じるか」こそが重要です。

繰り返しになりますが、お客様の立場で見れば「原価」や「相場」は参考程度にしかならないです。

余談:自信の罠

最後に余談です。僕もそうでしたが、自信のなさを製品価格に反映させてしまうことがあります

これは、起業直後や事業開発を始めたばかりの頃、あるいは学生起業で金銭感覚の基準が低いときに起こりやすいと思います。

自分はラーメンに2,000円も払えないから、本当はお客様が2,000円払いたいと思っていても、1,000円にしてしまう。あるいは、そもそもターゲットでない人の「高すぎる」という意見を鵜呑みにしてしまうこともあります(その人は安くても買わない)。

「自信を基準に価格設定をしてはいけない」と自戒を込めて、ここに残しておきます。

あくまで基準は「お客様が何円の価値を感じてくれているか」です。自分の視点ではなく、お客様の立場で考え続けたいと思います。

本当は「何円払ってでも買いたい!」「なんでこんな安く売ってるの!?」と驚かれるような製品を生み出せる力を、身につけていきたいです。

まとめ:原価≦価格≦価値

最後にまとめです。

  • 原価:価格の下限。これより安く売ると赤字になるライン。
  • 相場:価値アンカーにはなる。
  • 価値:価格の上限。これ以上高いと売れない、または不満につながる。
  • 満足度=価値-価格
  • 利益=価格-原価

簡単にですが、ここ数年で考えている価格の決め方をまとめてみました。フィードバックや感想があれば、ぜひ教えてください。