2024年も、色々な漫画を読んできたが、暫定一位が決まった。
『隣のお姉さんが好き』という漫画。
タイトルはキャッチーだが、内容は思春期の子どもたちの感情の機微が丁寧に、本当に丁寧に描かれていた。それはもう、自分の中学時代を鮮明に思い出して恥ずかしくなるほどに。
心からお勧めしたいので、好きだったシーンごとに推しポイントを伝えたい。
※ネタバレせずに読みたい方は、ぜひこの時点で離脱していただき、読み終わった後にかえってきていただきたい。
Table of Contents
概要
まず最初に、概要は以下の通り。
- 主人公は中学3年生の男の子、たーくん。
- そんなたーくんのお隣さんの高校3年生の女の子、心愛(しあ)さん。
- 脚本家を目指す映画が好きな心愛さんと仲良くなるために、たーくんは毎週水曜日に一緒に映画をみることに。
- そんな中で、恋愛を通じて、相手を知り、自分を知り、また相手を知っていく。
特に劇的な展開はない。しかし、夢を追いかける二人の若者が、恋愛を通じて少しずつ、でも確かに成長していく二人が愛しくなる物語。
僕はそんな話が大好きなんです。
俺はずっと 最低だったのかもしれない
俺はずっと最低だったのかもしれない。
俺は気づいた。好きな人の好きなものを利用して近づこうとするなんて、クソ野郎のすることだということに。
– 『隣のお姉さんが好き』44話 45話
心愛さんが自分と映画を見るのを楽しみにしてくれていると分かった瞬間、その感情を利用して仲良くなろうとしていたことを自認した。
それまで「自分の好きを伝えたい、知ってほしい、仲良くなりたい」という、たーくんの言葉を借りれば”自己中心的な”行動をしていた。しかし、恋をして相手のことを知れば知るほど、自分の感情、行動を認知することができた。
自分の嫌いなところに気づき、向き合うことができた。
俺に自分の話をしてくれたことが、すごく嬉しい
心愛さんは人付き合いが苦手で、だからこそ美しいヒューマンドラマに惹かれるのかも。
…聞けて良かったな。
心愛さんが俺に自分の話をしてくれたことが、すごく嬉しい。
– 『隣のお姉さんが好き』 60話
カラオケが苦手な心愛さんとカラオケに一緒に来た回。
なんと、あまり自分の話をしない心愛さんが、たーくんに過去の傷ついた失恋話(「あのこが思ってたような子じゃなかったんだろうなって。私が」)を話してくれた。
人間関係を「浅く軽く早く終わらせたいしね」という心愛さんが、自分の心を開こうとしてくれた、心を開いても良いと思ってくれた。
ただそれだけのことだけど、”すごく嬉しい”と感じるたーくんを見て、人と理解し合うこと・受け入れ合うことの喜びを再確認できた。
これからもよろしくね
映画いっぱい観て、できるだけ話そ。
そんでできるだけ会お。これからもよろしくね。
– 『隣のお姉さんが好き』 94話
最終回。
心愛さんは脚本家の夢を追いかけるために、上京することになる。つまり、たーくんと遠距離恋愛になってしまう。
引っ越しの日、最後に心愛さんは「これからもよろしくね」とたーくんに伝える。遠距離恋愛を海外、国内で乗り越えてきた僕としては、この言葉に感動した。泣いた。
これだけでいいんだよ。この言葉さえあれば、”関係を続けたい”という気持ちさえ知っていれば、遠距離恋愛を頑張りたいと思えるんだよ。
離れてる間も、なんか…離れている感じはしませんでした。
一緒にいたいって言ってくれてたんで…。
– 『隣のお姉さんが好き』 94話
そしてももう一つ。たーくんのセリフ、なんともシンプルで分かりやすい。
離れている感じ、つまり孤独を感じる理由は「物理的な距離」ではなく、「精神的な距離」に規定されるということがよく分かるセリフ。
たーくんと心愛さんが、遠く長い遠距離恋愛を経て、幸せな人生を歩んでいけるように願うばかりです。
まとめ
本当に面白くて、一気に94話まで読み終わってしまった。中学生の頃、Web漫画時代の『ホリミヤ』を夜通し読み漁った感覚に似ている。
思春期の自意識過剰、自分のことは好きだけど好きじゃない、相手に好かれたいけど知られたくない。そんな葛藤を丁寧に描いてくださり、自分の中学、高校時代の感情を思い出すことができた。
あの頃に感じた「自分を理解される喜び」「相手のことを知る嬉しさ」、そんな他者との関わりから得られる幸せを忘れずに、素敵な大人になっていきたい。
まあ、つまりは最高の作品でした。