なぜ1.6万食売れた「ブイクックデリ」をクローズしたのか。ヴィーガン商品のインフラ構築を目指す。

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こんにちは。工藤柊です。

このブログ「そうは言っても工藤さん」で文章を公開するのは、2年ぶりです。

更新を楽しみにしてくださっていた皆さん、お待たせして申し訳ありません。少しnoteの方で活動していましたが、今回からここに戻ってきたいと思います。

このブログに戻ってきた理由も書きたいところですが、今回のテーマを書き進めたいと思います。

2021年3月に正式リリースし、1.6万食売れたヴィーガン惣菜サブスク「ブイクックデリ」を、先月2022年5月でブランド終了しました。

ここでは「ブイクックデリからピボットした理由」「ブイクックモールで実現すること」について、書き記しておきます。

こんな人に読んでほしい
・新しくブイクック社に入社する未来の仲間
・同じようなフェーズの起業家
・これから起業しようと考えている方々

ヴィーガン惣菜サブスク「ブイクックデリ」とは?

まずは、「ブイクックデリ」について簡単に紹介しておきます。(知ってる方は飛ばしてもらって大丈夫です!)

ヴィーガン生活を送る上で「健康的なヴィーガン食にしたいけど、近くで帰る場所・食べる場所がなく、自分でお弁当を作る時間も余裕もない」という課題があります。これに対して「レンチン5分のバランス良いヴィーガン冷凍惣菜」という解決策を提供したのがブイクックデリです。

「ブイクックデリ」は、2020年11,12月に実施したクラウドファンディングで336名の支援を受けて、2021年3月に正式リリースされました。

その後、全国の労災病院(関東・横浜・大阪・関西・神戸)の食堂でも提供開始され、業務用冷凍惣菜としてB2B2Cの形でヴィーガンの選択肢を増やすことができていました。

5月末にブランド終了し、製造パートナーのアグリホールディングス社へ事業譲渡するまでに累計1.6万食売れていて、捉えていた課題と選択した解決策はバッチリだったと今でも考えています。

ピボットした2つの理由

一見順調だった「ブイクックデリ」ですが、ピボットを考え始めたのは正式リリースから1ヶ月後の2022年4月でした。(振り返ると早いです笑)

主に「ミッション観点の理由」「事業観点の理由」の2つの理由からの判断だったので、それぞれ簡単にまとめていきます。

①ミッション観点:一つの商品では達成できない

ブイクック社は「誰もがヴィーガンを選択できる社会をつくる」をミッションに掲げて、事業活動を行なっています。

今の日本でヴィーガン生活をしていると、自炊・外食・買い物・人間関係など、様々なシーンに課題があり、僕たちはそれを全て解決するために存在しています。

つまり、「ブイクックデリ」という商品だけをグロースさせても、「誰もがヴィーガンを選択できる社会をつくる」ことができないと考えました。

また、ブイクックデリを中心事業としている限りは、(当然ですが)ブイクックデリの認知拡大が最優先となり、既に世の中にある数多くのヴィーガン商品の情報を届けることができません。

このジレンマから脱却するためにも、自社商品の「ブイクックデリ」ではなく、全ての商品を販売する「ブイクックモール」へのピボットを決定しました。

まとめると
・「誰もがヴィーガンを選択できる社会をつくる」がミッション
・ブイクックデリだけでは、実現するには遠回りになる
・ブイクックモールで、既存のヴィーガン商品を届ける方が効果的

②事業観点:工場生産性・配送オペレーションではない

もう1つは事業観点から。

現状ではヴィーガン惣菜を製造・販売する他社は少ないため、「ヴィーガン×冷凍惣菜」というポジショニングだけで強み(選ばれる理由)になっていました。

ただし、これから新しいヴィーガン惣菜商品が生まれたり、既存の惣菜宅配サービスがヴィーガン対応したりと、ヴィーガン市場の成長に伴って競合サービスが乱立するのは時間の問題です。

そうなってくると、最終的な強みになるのは「工場の生産性による”安さ”」と「配送オペレーションの最適化による”パーソナライズ”」、つまり「安くて食べたいメニューが届くサービス」が選ばれていく、と考えられます。

つまりブイクックデリ事業は、今は類似サービスがないため成立していますが、向こう数年で状況は大きく変化し、生産性向上やオペレーションの最適化に投資する必要があります。

一方で、ブイクック社が獲得したいは「工場の生産性」でも「最適化された配送オペレーション」でもないです。

僕たちが目指すのは誰もがヴィーガンを選択できる社会であり、そのために「ヴィーガン生活におけるあらゆる課題を解決するプロダクト群」が求められます。

このプロダクト群による「ヴィーガン生活は、ブイクックさえあれば余裕で始められる・続けられる」という安心感あるブランドこそが、長期的な競争優位性(選ばれる理由)になると考えています。

それならば、投資すべきは「協力的なユーザーコミュニティ」「プロダクトマネジメントに強い組織」になります。

この2つが揃ってはじめて、ヴィーガン生活・人生のあらゆる課題を解決し続ける会社になり、誰もがヴィーガンを選択できる社会を実現し、社会を前に進められます。

長くなりましたが、まとめると
・ブイクックデリ事業は、今はポジショニングだけで成立している
・しかし、ヴィーガン市場の成長に伴い類似サービスは間違いなく増える
・そうなると、勝負所の「工場生産性」「配送最適化」への投資が必要
・一方で、「ヴィーガン生活を支えるプロダクト群」を強みとしたい
・そのために投資すべきは「協力的ユーザーコミュニティ」「プロダクトマネジメントに強い組織」

つまり、ブイクック社が目指す姿は「安価かつパーソナライズされたヴィーガン商品の製造会社」ではなく、「ヴィーガン生活・人生における課題の解決策を生み出し続ける会社」ということになります。
(事業観点と言いつつ、ミッションが全てだなと書いていて再確認)

参考

ピボットを意思決定するプロセス

ここまで書いてきた2つの理由で、ヴィーガン惣菜サブスク「ブイクックデリ」から、ヴィーガン商品通販サイト「ブイクックモール」にピボットすることを決定しました。

ここからは、どのようなプロセスでその意思決定に至ったかを記録していきます。

時系列で書くと、以下のような流れです。

ピボットを考え始めたのは、2021年4月。リリースの翌月になります。

その部分を4ステップに分けて書いていきます。

①問いをいただく

最初のきっかけは、ブイクックデリをリリースした後に、あるVCの方とお話しする中でいただいた問いでした。

「ブイクックの強みを活かすなら、”信頼できる情報が集約されれている”だと感じるけど、なんでブイクックデリ(製造業)なの?」という問いに、それっぽい理由で言い返すこともできたと思いますが、その時は純粋に「え、確かに…!」と腑に落ちました。

持ってる情報量が違う第三者からのアドバイスを全て鵜呑みにするのはよくないと思いますが、欠けている観点を補ってもらえる時間、本当に大切だなと感じます。

②強みについてお勉強

話の中で出てきた「強み」というキーワード、それまではあまり深く考えたことがなかったので、勉強してみることにしました。

勉強になった本や記事、podcastなど


上記の本やpodcast、記事では、「どんな強みを築き上げて、誰にも追随されない事業にするか?会社にするか?」というテーマのものです。(面白いのでぜひ!)

僕にとっては、「強み(競合優位性)は構築するもの」という認識を持ってプロダクトや事業を作ってこなかったので、目から鱗でした。

それから、今の強み(ポジショニング)を使って、どう中長期の強み(組織能力)を作っていくか?どんな強みを”選択”するか?という問いに向き合っていきました。

③ブイクックデリに至ったプロセスを反省する

「強み」について勉強し考える中で、改めてブイクックデリ事業に至った経緯を考え直してみました。

会社を2020年4月を設立し、最初の1年間はwebメディア運営やコワーキングのコミュニティマネージャー、サイト制作などの受託案件で日銭を稼ぎながら、ブイクック(ヴィーガンレシピ投稿サイト)の開発・運営を続けてきました。

レシピサイトは何千レシピも投稿され、Instagramも1万人以上にフォローされ、ヴィーガン生活に役立てられているが収益化ができておらず、必死にマネタイズの方法を試していました。

2020年7月にレシピ本『世界一簡単なヴィーガンレシピ』出版したり、それと同時にドレッシングの商品開発をしたり(結局販売には至らない)。

そんな中で、当時トレンドだったD2Cやサブスクを組み合わせたブイクックデリ事業が生まれました。

しかし、今考えれば僕たちの強みを活かしきれず、中長期の強みも欲しいものではないため、最良の判断ではなかったので反省です。

捉えていた課題・提供する解決策がハマっていた”良い判断”だったのも、トラップでした。

(とはいえ、収益化できる事業を作った経験、そのプランを元にした資金調達の経験を得られたのは、起業家としての第一歩を踏み出すことができ凄くよかったです。)

④ミッションから逆算して考える

そこで、改めてミッションである「誰もがヴィーガンを選択できる社会をつくる」ためには、どのような事業を生み出すべきなのか、どのような強みを構築するべきなのかを考えました。

その結論が、「ピボットした2つの理由」で書いたものです。

結果として、ヴィーガンの「買い物」の課題に対し、より大きなインパクトを与えることができるヴィーガン商品のマーケットプレイス「ブイクックモール」に至りました。

今のところ、最良の選択だったと考えています。
(更新されるかもしれないですが…!)

ブイクックモールで、ヴィーガン商品のインフラを構築する

まとめです。

ここまで記載してきたプロセスと、2つの理由で「ブイクックデリ」から「ブイクックモール」にピボットすることを決定しました。

ヴィーガンの買い物における「どんな商品があるか知らない・知るコストが高い」「それぞれ購入すると送料が高くつく」「近くのお店で気軽に購入できない」などの課題を、ブイクックモールが解決します。

ブイクックモールはこれから、あらゆるヴィーガン商品と出会えて、気軽に購入することができるヴィーガン商品のインフラを構築し、ヴィーガン生活を大きく支えるプロダクトになっていきます。

売上も立っていたため、勇気のいる意思決定でしたが、今となっては何十倍、何百倍のインパクトを与えられるプロダクトに集中できていることは、何より楽しくて100%納得して毎日仕事に取り組めているので、幸福度も上がりました。

疑問点やもっと詳細が聞きたいなどあれば、TwitterMeetyで気軽にご連絡ください!

今後は、仕事の中での学び・経験をどんどんこのブログに蓄積できればと思います。


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✏️ 書いている人

工藤 柊 / Kudo Shu

1999年2月28日大阪生まれ。高校3年生で環境問題・動物倫理からヴィーガン生活を開始。神戸大学国際人間科学部環境共生学科に入学後、学食へヴィーガンメニュー導入、ヴィーガンカフェThallo店長など活動。学生起業しNPO法人設立後、事業拡大のため2020年4月に株式会社ブイクックを創業。夢は世界平和。趣味は恋バナと漫画・アニメ。

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